今回は前回に引き続き、プレザンメゾン広畑の原田さんにインタビューさせて頂きました。
前回は主に施設のことについてお伺いしましたが、今回は原田さんご自身のお話を中心にお伺いしています。
前回の記事はこちら:「夢を諦めない施設」を目指す、プレザンメゾン広畑の組織作り@兵庫県姫路市
やっぱりここの施設で最期を迎えてよかった。
原田さんが「介護の業界を選んで良かったなー」と感じられたのはどんな時でしょうか?
原田さん(以下敬称略):ケア21ではお看取りも率先してさせて頂いてまして、実際に新規施設ですけど前の施設ではお看取りを何人もさせて頂いていたのですが、ご家族様から「やっぱりここの施設で最期を迎えてよかった」って言われるときがやっぱり一番嬉しいですね。
(入居者さんともご家族とも)たまたまの出会いで、本当の一期一会なんですけど、やっぱりいろんな失敗もあるわけなんです。こちらが起こしてしまった事故もあるし、その中で謝罪もして、その不信感が生まれることもあります。
その中でも、何度も関係を作っていって、最後に「何かいろいろあったけど、出会えてよかった」とかって言われると、「私の方こそ、すごい勉強させて頂きまして、ありがとうございます!」に繋がるので、介護って介護技術ではなくて本当の1対1で向き合うことだなと思います。
現在は管理職として働いていらっしゃると思いますが、現場で働いていた時に原田さんが大切にしていたことはどんなことですか?
原田:そうですね、先程もありましたけど、やっぱり介護って1対1で向き合うこと、一人一人の思いに添えるかってところが大事だと思います。入居者さんがこういう仕草(腕をさするような仕草)をしていたら、「あ、寒いですね。カーディガン取ってきます。」とか、それも介護なんですね。介護って、何か介護技術でだけではないのかなと思います。
なので、私は移乗が上手とか、なんかそんなことよりかは、入居者様が「入浴の介助してもらって気持ち良かった」と仰りましたっていう介護記録を見ると、「喜んで入ってもらったんやな」って思うのと同時に、担当した職員に「(入居者さんを)そんな気持ちにさせてくれてありがとう」って思いますね。
逆に、介護のお仕事の苦しさっていうのはどう考えていらっしゃいますか?
原田:やっぱり人員不足で業務に追われてしまっていて、「もう業務だけ」になってしまっているところだと思います。
だから介護の楽しさまでいけなくて、もう数をこなして業務だけに追われてしまうっていうのを見ると、職員さんにもうちょっと余裕のある介護をさせてあげられないかと思っています。
同時に入居者様にも、もうちょっと、笑顔にさせてあげられる時間があればいいなと思いますし、本当に人員不足っていったとこだけが問題だなっていうのは思っています。
介護の仕事って本当はとっても笑いが多いんです。こっちが笑かされることもすごく多かったりするんで、楽しさに気付く前に辞めちゃわないようにしていきたいと思います。
本当に笑かされました。人生の先輩には敵いません!
原田さんの中で、印象に残っている入居者さんとのエピソードはありますか?
原田:そうですねー、私最初に介護のお仕事ついたときの話なんですけど、介助しててトイレに誘導してたんです。その時に手袋はめようと思ったら、手袋がなかったので「あ、手袋ないから、ちょっと手袋取ってきますー」って言って探しにいったんです。それで、トイレに戻ってきてみたら、入居者様がトイレに座ったまま、手袋をしてドヤ顔で座ってたんです(笑)
そん時には、「うわー、これはやられたー」と思ってめちゃくちゃ笑っちゃったんですよ。
イタズラされてたんですね(笑)
原田:そうなんです!何気ないお仕事の中でもあるんですよー。
夜8時ぐらいに入居者さんが阪神の試合見てるところに、下剤とかを小皿に入れて持ってたんです。私が「もう8時なったんでこれ飲みましょうかー」というと、「おっ!お酒持ってきてくれたんか!」とか言うんですよ(笑)
私が何か笑かそうとしなくても、入居者さんに笑わせてもらったりとか。そういう発想大事だなと思います。人生の先輩には敵いませんから。
でも、本当に笑いっていうのは大事だと思いますよ。
笑いで少しの余白を作る
私の母も、実は認知症だったんです。母はもう他界しているんですが、認知症の辛さとかっていうものはわかっているつもりです。実際に、認知症になった母じゃない姿も知っていますし、ふと母に戻る姿も知っています。
実際にここで入居されてる方で、認知症の方もいらっしゃいます。それで、家族さんは向き合いすぎて疲れてしまって、何とかしてもらいたいっていらっしゃることがあります。
でもね、そういうときってどんだけ考えても、「なんでこんなことするんやろう」と考えてもわからないんです。
そして、こういう時って、実はご本人(入居者様)もしんどいんですよ。なぜかというと、ご本人もどうにもならないことを一生懸命考えてるから。こういう時に家族さんも一緒になって「なんでこんなんやろ」って同じ位置に立っちゃうと、結局もう出口の見えない何かわからないところに暗いとこに迷い込んじゃってしまうんです。
その出口を出るにはちょっと違う考え方をして、その執着から逃がしてあげる必要があるんです。
なので、(ちょっとおどけた言い方で)「今はもうどう考えてもわかりません」、「その答えはないです」、「なのでちょっと一旦横におきません?この問題?」みたいな形で、もうちょっと笑いの方にもっていくんです。そうしたら、すっと離れることもありますね。
管理者のはじめの頃は、他人の価値観は変えられると思っていました
原田さん、本当にステキなマネージメントされてると思いますが、昔からそうだったんですか?
原田:いえいえ、私も最初にその管理者とか副施設長になった時って、「この人いいへんかったらもっとうまくいくのに」とか、どちらかというと切り落とすことしか考えてなかったんです。
今の一緒に働いている人にどういうことしてあげたら、この人がこう生きていくのかなっていう考えに全然最初は到達しなくって、それで辞めていった方もいらっしゃいます。
でもやっていく中で、考えは変わっていきましたね。
介護のお仕事って、スタッフで協力してやっていくのですごい現場は楽しいんですよ。「一緒に(サービスを)作り上げているな」っていう感じがあるんです。なので、淡々と仕事をするんではなくて、「今日も事故なく終えられてよかったねー」というようなことを、もっとみんなと共感し合えたらいいなと思うようになりましたね。
切り落とすというのは強烈ですね…。それはどういうことかもう少し詳しく教えて頂けますか?
原田:そうですね、他人を変えることは出来ないのに変えようと思ってたり、「この人は私の思いと一緒じゃない、ちょっと価値観が違う」からダメみたいに思ってました。もう、今思い出すと、本当に全然ダメ(なマネージメント)でしたね…。
今思うと、そりゃそうだなと思うんですが、価値観なんかは違うのが当たり前だし、私がその相手を認めない限りは、それは向こうも認めないだろうし、やっぱりいい関係性は出てこないかなと思いますもんね。
いやー、本当にそうですよね。
原田:なので、最初の頃は自分ではそんなつもりはないですけど、私が注意してるときって、相手が「人格的に否定されてんのんかな」って感じるような注意の仕方をしてたのかなと思います。
でも今はどちらかというと、「どうしたらこの人の耳の奥にこの言葉が届くかな」っていうので考えてます。
結局ね、やっぱりすっと受け入れてもらおうと思ったら、その人が「否定されてる」って思わないようにしなきゃいけないんで、なんとか聞いてもらえるようにっていうのを、あの手この手いろいろいつも考えてますね。
素晴らしいですね、本当に。
原田:今も、いっぱいつまづいてますけどね(笑)
今日は本当にステキなお話をたくさん聞かせて頂き、ありがとうございました!最後に一言お願いします!
原田:こちらこそありがとうございました。介護のお仕事の「大変やね」とか「しんどいよね」ということをお考えの方がいらっしゃれば、私は何とかそこを変えていきたいと思っていますので、ぜひうちに飛び込んできてほしいと思います。これからちょっと介護をしてみたいと思っている方や、若い方もぜひ飛び込んできて下さい!お待ちしています。
インタビュー日:2024年2月
インタビュー先:プレザンメゾン姫路広畑(有料老人ホーム)
兵庫県姫路市広畑区夢前町3丁目1番21
インタビュワー:NOWIST株式会社 押味 隆宏